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風土

著者:和辻哲郎
発表:1931年
分野:社会学

風土とは

人間がいかに風土(気候、地勢などの自然環境)によって規定されるかを解説した書。風土をモンスーン、沙漠、牧場の三つの類型に分けて、それぞれの風土における人間・社会のあり方を活写した。ここで言う「人間」とは、観念的に抽出された人間一般のことを指すのではない。人は自らが生きる風土の中で自己を見出し認識する、すなわちそこに「人間」が形成されるのであり、風土と截然と分かち得ないものである。和辻が繰り返し強調する、「特定の風土とともに了解される人間」という考えは、ハイデガー『存在と時間』に刺激を受けている。ハイデガーは現存在たる人間を時間の概念から分析したが、彼はこれを空間的に分析しようとしたのである。なお、本書は和辻がドイツ留学した折に見聞した実体験をもとに書かれているためか、アフリカやアメリカ大陸についての言及がない一方、日本の文化や社会のあり方について詳述している。